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vol.8 マイコプラズマ肺炎について

・マイコプラズマ肺炎とは

マイコプラズマ肺炎は、マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)という微生物によって引き起こされる呼吸器感染症です。昨年11月には天皇陛下や皇太子ご夫妻の長女、敬宮愛子様が入院なされた際にマイコプラズマ肺炎感染の可能性があるとしてメディアでとりあげられ、みなさまも耳にする機会が多かった言葉ではないでしょうか。マイコプラズマは細菌とウイルスとの中間に位置する微生物であり、ウイルスのように他の生物の細胞の力を借りて増殖するのではなく細菌と同様に自分の力で増殖しますが、一般の細菌とは異なり細胞壁を持たないという特徴もあります。マイコプラズマ肺炎の発生は年間を通して見られ、冬にやや増加する傾向があります。従来4年毎の周期で発生が増減しており、近年では1984年(昭和59年)、1988年(昭和63年)に大きな流行がみられました。このため「オリンピック病」と呼ばれたこともありましたが、最近ではそのような規則的な流行はなくなってきています。 ・臨床症状と感染経路 主な症状は発熱、倦怠感、頭痛、咳などです。感染後2~3週間の潜伏期間を経て発症し、経過に伴い咳は徐々に激しくなり、解熱した後もなかなか改善せず、3~4週間ほど続くことがあります。他に中耳炎や発疹、ときには髄膜炎、脳炎、心筋炎、肝炎を合併することがあります。感染経路は飛沫感染・接触感染であり、感染者の気道の分泌物に含まれる病原体が咳やくしゃみにより飛沫となり、この飛沫を吸いこむことなどにより感染すると考えられます。家庭内、学校、職場などの集団内での感染率は高くなります。また、潜伏期間が比較的長いため施設での流行が起こった場合には数カ月続くこともあります。 ・治療と予防

マイコプラズマ肺炎の治療は抗菌薬による化学療法と発熱や咳などの症状を抑えるための対症療法が主体となります。マイコプラズマは細胞壁を持たないため、細胞壁の合成を阻害する薬剤(ペニシリン系、セフェム系薬剤)は効果がなく、マクロライド系やテトラサイクリン系、ニューキノロン系薬剤が用いられます。マイコプラズマ肺炎に対するワクチン(予防接種)は今のところありません。感染を広げないためには手洗い、うがいなどの一般的な予防方法の励行、マスクを着用するなどの咳エチケットが基本となります。

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