草冠に楽と書いて薬。
薬という字を覚えるとき、こんなふうに習った記憶があります。
おそらく、身体の調子が悪いときに、ある特定の草を食べたところ、すっと身体が楽になった…そんなところから、この漢字は生まれたのでしょうか。
でも、これは”漢字”の「薬」のお話。”やまとことば”の「くすり」のルーツはどのようなところにあるのでしょう。
聞くところによると、「くすし」ということばと同じ語源であるという説が有力です。
この「くすし」は「神秘的だ」「霊妙な力がある」「突出した」といった意味の形容詞で、「奇し」という漢字が当てられており、古くは、『万葉集』に「わたつみはくすしきものか(海の神は人智の及ばない力があるものだなぁ)」という記述を見ることができます。
こう聞くと、私たちが飲む「くすり」は、海の神とまでは言わずとも、すごく効きそうな感じがしますよね。
しかし、この力を手放しで喜ぶわけにはまいりません。実は、「くすし」には、もう一つの意味があるのです。
それは、「不自然でそぐわない」「居心地が悪い」「窮屈だ」という意味…。
でも、それはそうでしょう。いつもの自然な状態とは異なる体調に対して私たちが投じる「くすり」は、もともと不自然なものです。間違えた使い方をすれば、それこそ、人知の及ばぬ事態にもなりかねません。
「くすしき」力は諸刃の剣。「くすり」は正しく服用しましょう。
そして、分からないことや、不安なことがあれば、すぐに薬剤師にお尋ね下さい。「くすしき」専門知識を得るために、日々研鑽を積んで、患者様をお待ちしております。
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